2025年7月、日本に未曾有の大災難が訪れる——。漫画家・たつき諒(たつきりょう)氏が自身の著書『私が見た未来 完全版』で記したこの予言が、今、社会全体を巻き込む大きな渦となっています。具体的な日付や衝撃的な内容から、人々の関心は高まる一方、香港では日本への旅行キャンセルが相次ぎ、経済的な影響も出始めています。ついには気象庁長官が異例の言及をする事態にまで発展しました。
この記事を読んでいるあなたも、「予言の内容は本当なのか?」「一体何が起こるとされているのか?」「なぜこんなに騒がれているのだろう?」といった様々な疑問や、漠然とした不安を抱えているのではないでしょうか。私自身、時事問題を追う記者として、この現象が単なるオカルトブームでは済まされない、現代社会の複雑な側面を映し出す鏡であると感じています。
そこで本記事では、プロの時事ライターとして、この社会現象をあらゆる角度から徹底的に分析・解説します。単なる予言の紹介にとどまらず、その背景にある出版社の戦略、編集長の思想、そしてネットで囁かれる特定の団体との関係性まで、客観的な事実に基づいて深く掘り下げていきます。
- 予言の具体的な内容:『私が見た未来』と新刊『天使の遺言』で何が語られているのか、ネタバレを含めて、他の終末論と比較しながら詳解します。
- 信憑性の徹底検証:過去に「当たった」とされる予言、「外れた」とされる予言を一覧で比較し、的中率の真相に迫ります。なぜ人は予言を信じてしまうのか、その心理にも踏み込みます。
- 社会現象化の理由:なぜこれほどまでに大きな話題となったのか、専門家の見解や海外での反応、約5600億円とも試算される経済的影響を交えて分析します。
- 背景にある人間関係:予言が広まる一因とされる出版社「飛鳥新社」と編集長「花田紀凱」氏、そしてネットで囁かれる旧統一教会や幸福の科学との関係性の噂について、具体的な寄稿記事や発言を基に考察します。
- 私たちがどう向き合うべきか:科学的根拠と防災の観点から、この情報とどう付き合っていくべきかを具体的に提言します。
この記事を最後まで読めば、たつき諒氏の予言に関する全ての情報が網羅的に理解できるだけでなく、情報が氾濫する現代社会を生き抜くためのリテラシーも身につくはずです。それでは、謎多き予言の核心へと、共に迫っていきましょう。
1. たつき諒氏の2025年7月予言、その具体的な内容とは何か?


現在、日本中、いやアジアの一部をも巻き込んで世間の注目を一身に集めている、たつき諒氏の「2025年7月」に関する予言。その全ての震源地となっているのが、1999年に一度ひっそりと出版され、22年の時を経て2021年に『完全版』として鮮烈に復刻された漫画『私が見た未来』です。この章では、多くの人々が最も知りたいであろう予言の具体的な内容について、ネタバレを含みながら、その衝撃度と詳細を余すところなく解説していきます。
1-1. 『私が見た未来 完全版』で描かれた「本当の大災難」とは?
『私が見た未来 完全版』を手に取った人がまず目にするのは、その帯に記された「本当の大災難は2025年7月にやってくる」という、読者の心臓を掴むような衝撃的な一文です。この「大災難」こそが、現在の社会現象のまさにコアとなる部分です。
この予言は、たつき諒氏が1985年から記録し続けてきたという「夢日記」に基づいており、単なる曖昧な未来予測ではありません。非常に具体的かつ視覚的なイメージで描かれている点が、他の予言と一線を画しています。その内容は、日本国内の災害にとどまらない、地球規模の巨大な変動を示唆するものでした。
著書で描かれているビジョンを具体的に整理すると、以下のようになります。
- 発生源:日本とフィリピンの中間あたりの海底が、まるで巨大な生き物が目を覚ますかのように「ボコン」と破裂(噴火)する。この擬音語の生々しさが、読者に不気味なリアリティを感じさせます。
- 津波の規模:その結果として発生する津波は、日本国民の記憶に深く刻まれている東日本大震災の津波の、実に3倍にも達する巨大なものとされています。未曾有の国難であったあの震災を遥かに凌駕するスケールです。
- 被害範囲:巨大津波は太平洋全域に広がり、周辺国を次々と襲います。日本では、太平洋に面した広大な沿岸域、実に国土の3分の1から4分の1が飲み込まれるという、想像を絶するビジョンが描かれています。
- 地形の激変:さらに衝撃的なのは、津波の物理的な力によって陸地が押し上げられ、隆起するという描写です。その結果、香港から台湾、そしてフィリピンまでが地続きになるという、まさに大陸が動くような、常識では到底考えられない地殻変動が示唆されています。
これらの描写は、読む者に強烈なインパクトを与えるだけでなく、近年、政府や研究機関が警鐘を鳴らし続けている「南海トラフ巨大地震」や「首都直下型地震」といった、現実に懸念されている大災害と結びつけて考える人々を続出させました。あくまで作者が見た夢の記録でありながら、その詳細さとリアリティが、人々の心の奥底にある災害への恐怖心を的確に刺激し、不安を掻き立てる大きな要因となっているのです。私自身、この記述を読んだとき、その具体的なイメージに背筋が凍る思いがしました。
1-2. なぜ「2025年7月5日午前4時18分」という日時が広まったのか?
予言の恐ろしい内容とともに、人々の間で確정적인情報のように独り歩きしているのが、「2025年7月5日午前4時18分」という極めて具体的な日時です。このピンポイントな日時は、一体どこから生まれ、どのようにして広まっていったのでしょうか。
その出所は、他ならぬ『私が見た未来 完全版』の「作者あとがき」にあります。たつき諒氏自身が、この「大災難の夢」を見たとされるのが、2021年7月5日の午前4時18分でした。そして、あとがきには次のような一文が記されています。
「夢に現れた日付が現実化する日ならば、次にくる大災難の日は『2025年7月5日』ということになります。」
ここで重要なのは、これが断定的な予言ではないという点です。これは、彼女の過去の予知夢の経験則からくる「もし夢を見た日付の数字が、現実化する日付とシンクロするという法則が今回も適用されるのであれば」という、あくまで仮説に基づいた記述でした。しかし、情報が高速で流通する現代のネット社会において、この丁寧な前提条件は多くの場合、無視されてしまいます。
この一文が、特に影響力の大きいYouTuberやインフルエンサーによって「7月5日に大災害が来る!」というセンセーショナルな見出しで切り取られ、SNSや動画サイトを通じて拡散されました。一度「分かりやすく」「衝撃的」な形に加工された情報は、瞬く間に人々の間に浸透し、あたかも確定的な予言であるかのように受け止められてしまったのです。後に作者自身がこの日付を明確に軌道修正することになりますが、一度デジタルタトゥーのように刻まれた情報の訂正が、いかに困難であるかを象徴する出来事となりました。
1-3. 東日本大震災の3倍とされる津波と災害の連鎖への示唆
この予言の中で、人々の心に最も深く突き刺さっているのが、「東日本大震災の3倍」とされる津波の規模でしょう。2011年3月11日、日本の観測史上最大規模の地震が引き起こした大津波では、岩手県大船渡市で最大40.1メートルの津波が観測されました。私たちは、その破壊力と悲劇を鮮明に記憶しています。その3倍となると、実に120メートル級という、高層ビルに匹敵する途方もない高さの水の壁が押し寄せる計算になります。
この点について、社会学者の古市憲寿氏は、地球物理学の専門家の見解として、リアス式海岸の湾内など極めて特殊な地形を除き、外洋で100メートルを超える津波が発生することはまず考えられないと指摘しています。つまり、科学的には想定しがたい、まさに「破滅的」な現象です。
さらに、たつき諒氏が見た夢は、この巨大津波という一度の災害では終わらない、恐ろしい「災害の連鎖(カタストロフィック・カスケード)」の可能性をも示唆している点が特徴です。津波や地震を皮切りに、それに連鎖して以下のような複合的な災害が地球規模で起こる可能性が描かれているのです。
- 世界規模の火山噴火:巨大な地殻変動が地球全体の火山活動を刺激し、連鎖的に噴火を引き起こす。
- 急激な気候変動:大量の火山灰が大気中に放出され、太陽光を遮断。それにより地球全体の気候が急激に変動する。
- 世界的な食糧問題:気候変動や津波による塩害などで、世界中で農業が壊滅的な打撃を受け、深刻な食糧危機が発生する。
- 人類全体の存続の危機:これらの複合災害が、最終的に人類全体の生存を脅かすほどの危機へと繋がっていく。
つまり、2025年7月に起こるとされる出来事は、これから始まるさらなる大きな地球規模の変動の、ほんの「引き金」に過ぎないという、壮大なスケールのビジョンが提示されています。この黙示録的な世界観もまた、単なる地震予知とは一線を画し、人々の想像力と根源的な恐怖を強く刺激する一因と言えるでしょう。
2. 【ネタバレ】新刊『天使の遺言』で明かされた作者の真意と予言の軌道修正
ミリオンセラーとなった『私が見た未来 完全版』が社会現象化する中、多くの人がその真意を測りかねていました。そんな喧騒の最中、2025年6月15日に作者のたつき諒氏は、竜樹諒(たつきりょう)名義で新たな自伝『天使の遺言』を文芸社から緊急出版しました。この本は、予言が意図せず一人歩きしてしまった現状に対し、彼女自身の言葉でその真意や出版に至るまでの驚くべき経緯を詳細に語る、いわば「回答」とも言える一冊です。ここでは、新刊で明かされた重要なポイントをネタバレ含みで深く解説します。
2-1. なぜ新刊を出版した?「予言の一人歩き」への困惑と偽物の存在
たつき諒氏が沈黙を破り、再びペンを取った最大の動機は、自身の意図とは全く異なる形で予言がセンセーショナルに広まり、社会に混乱を招いてしまっている現状を、自らの手で正したいという強い思いからでした。彼女の告白の中でも特に衝撃的なのは、自分を騙る「なりすまし」の存在です。
『天使の遺言』で明かされた経緯は、にわかには信じがたいものです。たつき諒氏が漫画家を引退した後、彼女の名前を騙る偽物の人物がSNSやYouTubeに登場。そればかりか、大手週刊誌『FRIDAY』やオカルト雑誌『ムー』の取材にまで応じ、富士山噴火など、彼女が言ってもいない虚偽の予言を次々と発信していたというのです。そして、その偽物によって『私が見た未来』の復刻版を出版する話まで、水面下で着々と進められていました。
この異常事態を知人からの連絡で知ったたつき諒氏本人が、慌てて出版社に連絡を取ったことで、偽物による商業出版という最悪の事態はギリギリで阻止されました。その後、本人による正当な『完全版』が出版される運びとなりましたが、その過程もまた理想的ではなかったと彼女は語ります。世間の注目度が高まる中、急ピッチで作業が進められた結果、出版社の「売れる本にしたい」という意向が強く反映され、自身の真意が十分に伝わらない不本意な点が残ったと告白しています。この一連の騒動を経て、自らの言葉で、自らの納得のいく形で真実を残したいという強い決意が、今回の自費出版という形での『天使の遺言』刊行に繋がったのです。
2-2. 「私は予言者ではない」たつき諒氏本人のスタンスとは何か?
新刊『天使の遺言』、そして関連するインタビューを通じて、たつき諒氏は一貫して「自分は予言者ではない」と繰り返し強調しています。これは、今回の騒動を理解する上で最も重要なポイントかもしれません。彼女はあくまで、1985年から個人的に続けてきた「夢日記」を記録し、それを一人の漫画家として作品の形で発表してきたに過ぎない、という立場を崩していません。
彼女のスタンスをより深く理解するために、その主張を整理してみましょう。
- 予知能力者という自覚はない:自身に何か特別なサイキック能力があるとは考えておらず、なぜ見た夢が現実になることがあるのか、そのメカニズムも分からないとしています。
- 不安を煽る意図は皆無:自身の夢が社会的な不安を煽る形で一人歩きしてしまったことに、本人も大変驚き、心を痛めています。恐怖を広めることが目的では決してなかったと述べています。
- 夢は予言ではなく「証言」:彼女は自らが見た夢を、未来を断定する「予言」ではなく、あくまで個人的な体験に基づく「証言」として捉えています。
そもそも『私が見た未来』が「東日本大震災を予言した」と10年以上経ってから話題になったこと自体、彼女にとっては全く予想外の出来事でした。今回の2025年7月の予言騒動についても、彼女はメディアの取材に対し、「高い関心は防災意識が高まっている証拠であり、前向きに捉えております」と、あくまで冷静な姿勢を保っています。この騒動をきっかけに、一人でも多くの人が防災について考えることに繋がれば、という願いを表明しているのです。
2-3. 「2025年7月5日」の日付を否定?軌道修正の内容を詳解
新刊『天使の遺言』で、社会的に最もインパクトがあったのは、「2025年7月5日」という具体的な日付に対する明確な軌道修正です。『私が見た未来 完全版』のあとがきで、この日付の可能性について自ら言及したことについて、たつき諒氏はその背景を次のように説明しています。
「『私が見た未来 完全版』の「作者あとがき」で、「次にくる大災難の日は『2025年7月5日』ということになります」と書いていたのは、過去の例から「こうではないか?」と話したことが反映されたようで、私も言った覚えはありますが、急ピッチでの作業で慌てて書かれたようです」
そして、最も重要な部分として、「夢を見た日=何かが起きる日というわけではないのです」と、日付の特定をはっきりと否定しました。これは、予言が香港の経済にまで影響を及ぼすなど、社会的な影響が自身の想像を遥かに超えて大きくなってしまったことを鑑み、これ以上の誤解と混乱を生まないために、勇気をもって強く発信したメッセージと言えるでしょう。
ただし、ここで注意すべきは、彼女は「7月に大災害が起こる」という夢で見たビジョンそのものを取り下げたわけではない、という点です。あくまで、ピンポイントな「日付」が意図せず独り歩きしてしまったことへの訂正であり、夢で見た災害の可能性という根幹部分については、変わらず警鐘を鳴らし続けているスタンスです。この軌道修正は、予言を固く信じていた一部の人々に少なからず動揺を与えましたが、同時に作者の誠実さや責任感の表れと受け止める声も多く上がっています。
3. たつき諒の予言は外れた?当たった?的中したとされる予言一覧を徹底検証
たつき諒氏の予言がこれほどまでに社会的な説得力を持ってしまったのは、過去にいくつかの重大な出来事を「的中させた」とされる華々しい実績があるからです。しかし、その一方で「外れた」とされる予言や、そもそも本人が言及していないにも関わらず彼女の発言として流布しているデマ情報も数多く存在します。ここでは、一人のジャーナリストとして、その信憑性を客観的に判断するため、当たったとされるもの、外れたとされるものを公平に、そして徹底的に検証していきます。
3-1. 【当たったとされる予言】東日本大震災(2011年3月)は本当に予言されていたか?
たつき諒氏の名を世に知らしめ、今回の騒動の全ての始まりとなったのが、東日本大震災の予言です。これは、1999年に朝日ソノラマから出版された旧版『私が見た未来』の表紙カバーに、非常に明確な形で「大災害は2011年3月」と記されていたことに由来します。
このあまりにも具体的な記述は、2011年3月11日に実際に東日本大震災が発生した後、10年近く経ってからネット上で「あの震災を予言していた幻の漫画がある」と話題になり、絶版だった古書がAmazonやフリマアプリで数十万円という信じられないプレミア価格で取引されるほどの過熱ぶりを見せました。
作者本人によれば、これは単行本の締め切りの日に見た夢が元になっているそうです。当初は「1999年の災害は小規模に、そして大災害は2011年3月に」と書くつもりだったものが、夢の中で見たビジョンがあまりに強烈だったため、年と月だけを強調して追記したと『完全版』で解説しています。
確かに、年と月がピンポイントで一致している点は驚愕に値します。しかし、冷静に検証すると、以下のような事実との相違点も指摘されています。
- 季節のズレ:夢の中では、その災害は「夏の出来事」としてビジョンに現れたとされていますが、実際の震災は3月、つまり冬の終わりから春先にかけて発生しました。
- 具体性の欠如:「大災害」という表現のみで、それが地震なのか津波なのか、また発生する具体的な場所(東北地方など)については一切言及がありませんでした。
これらの点を踏まえると、「偶然の一致」や、災害が起きた後に過去の記述を「後付けで解釈」した結果と見ることも十分に可能です。しかし、多くの人々にとって、他の予言にはない「2011年3月」という具体的な文字列の一致は、彼女の予知夢に並々ならぬ信憑性を感じさせる、極めて強力な根拠となっているのは間違いない事実です。
3-2. 【当たったとされる予言】フレディ・マーキュリーの死やダイアナ妃の事故死も的中か?
東日本大震災のインパクトがあまりに強いため霞みがちですが、他にも世界史的な出来事を予知していたとされる事例がいくつか存在します。代表的なものを時系列で詳しく見ていきましょう。
出来事 | 予知夢の内容と見たとされる日 | 実際の発生日 | 検証と考察 |
---|---|---|---|
フレディ・マーキュリーの死 | 1979年11月24日に「世界的ロックバンドQUEENのボーカル、フレディ・マーキュリーが亡くなったというニュースを見た夢」を記録。 | 1991年11月24日 | 12年もの歳月を経ていますが、夢を見た日付と実際の命日の日付が完全に一致している点が非常にミステリアスです。単なる有名人の死ではなく、日付まで一致するケースは稀であり、信憑性を高める一因となっています。 |
阪神・淡路大震災 | 1995年1月2日に「15日後か15年後、神戸に大地震が来る夢」を見たとされる。(日付については不確定な情報も多い) | 1995年1月17日 | 「15日後」という点が注目されますが、場所が「神戸」と特定されていたかが重要です。これも具体的な記述というよりは「大きな揺れで都市が崩壊する」といった象徴的な夢だった可能性が指摘されています。 |
ダイアナ元妃の事故死 | 1992年8月31日に「DIANNAという文字とお城で赤子を抱く女性、そして『車』という文字が見えた夢」を記録。 | 1997年8月31日 | こちらもフレディの例と同様に、5年の時を経て夢を見た日付と事故死した日付が一致しています。しかし、作者自身は著書の中で「亡くなるというイメージは全くなかった」「読者の方によって『意味付け』されたものと言えるかもしれません」と述べており、後付け解釈の可能性も示唆しています。 |
これらの事例を分析すると、日付が一致するなど科学では説明できない驚くべき点がある一方で、作者の意図を超えて、読者や受け手が意味を付与している側面も色濃く見受けられます。信じるか信じないかは、まさに個人の解釈に委ねられていると言えるでしょう。
3-3. 【外れた予言】偽物のたつき諒によるデマと富士山噴火の真相
予言の信憑性を語る上で、明確に「外れた」予言や、そもそも作者自身が発信していない「デマ」を区別することは極めて重要です。残念ながら、たつき諒氏の名前を騙る「なりすまし」の人物によって、多くのデマ情報が拡散されてしまいました。
代表的なデマ・外れた予言は以下の通りです。
- 尾崎豊さんの死:たつき諒氏本人は言及していません。偽物が勝手に予言したとされる情報です。
- 2021年8月20日に富士山が噴火する:これが最も有名なデマです。『私が見た未来』の中に富士山噴火を示唆するイラストがあったことを悪用し、偽物が具体的な日付を付けて予言したことで、SNSで大きな話題となりました。もちろん、2021年8月20日に噴火は起きていません。
たつき諒氏ご本人は、富士山に関する夢を過去に3回(1999年、2002年、2005年)見たことは認めていますが、新刊『天使の遺言』の中で「夢の中の富士山は(大災害の)象徴的なもので、大規模な災害は起こらないと思っています」と記しており、パニックを煽るような偽物の予言とは明確に一線を画しています。この偽物の存在が、本物の作者を世に引きずり出すきっかけになったのは、皮肉な結果と言えるかもしれません。
3-4. 的中率90%は本当か?予言の信憑性についての総合的な考察
インターネット上を検索すると、「たつき諒の予言は的中率90%」といった、非常にキャッチーな言説が散見されます。しかし、はっきり申し上げて、この数値には何の科学的・統計的根拠も存在しません。作者自身がそのような数値を公表した事実はなく、これは予言の信憑性を高めたい一部のメディアやファン、あるいはアクセス数を稼ぎたいアフィリエイトサイトなどが作り上げた、多分に誇張されたイメージである可能性が極めて高いです。ジャーナリストとして、このような安易な数字には強い警戒感を覚えます。
予言やオカルト情報の信憑性を客観的に評価する上で、私たちはいくつかの心理的な罠に注意する必要があります。
- 確証バイアス:人間は、自分が信じたい情報を無意識に集め、それに反する情報を無視・軽視してしまう傾向があります。たつき諒氏の予言に関しても、「東日本大震災」や「フレディの命日」といった当たったとされるインパクトの強い情報ばかりが繰り返し語られ、外れた予言や曖昧な予言は人々の記憶から忘れ去られがちです。
- 後付け解釈(レトロフィッティング):これは、非常に曖昧で抽象的な予言を、後から起こった具体的な出来事に都合よく当てはめて「当たった」と解釈してしまう心理現象です。ダイアナ妃の例のように、作者自身が「死のイメージはなかった」と語っているにも関わらず、結果的に事故死と結びつけられてしまったのが典型です。
- 予知夢という現象の不確かさ:そもそも予知夢という現象自体が、現代科学では証明されていません。あくまで個人の脳が見せる主観的な体験であり、その解釈は無数に存在します。同じ夢を見ても、人によって全く異なる意味を見出すでしょう。
以上の点を総合的に考察すると、たつき諒氏の夢日記が、いくつかの歴史的な出来事と科学では説明できない奇妙な一致を見せているのは興味深い事実です。しかし、それを「90%の確率で未来を当てる予言」として絶対視し、自らの行動や判断の基準にすることは、非常に危険な行為です。私たちは、この一連の現象をあくまで一つのミステリーとして捉え、常に冷静で批判的な視点を保ち続けることが重要でしょう。
4. なぜ炎上?たつき諒の予言が社会現象になった5つの理由を徹底分析


一個人の漫画家が見た夢の話が、なぜこれほどまでに国境を越え、株価や航空便にまで影響を及ぼすほどの巨大な社会現象へと発展したのでしょうか。その背景を紐解くと、現代社会特有の情報伝達の仕組みや、災害大国に生きる私たちの集合的な深層心理が複雑に絡み合っていることが見えてきます。時事問題を扱う記者として、この「炎上」とも言える現象を5つの側面に分けて徹底的に分析します。
4-1. 理由1:専門家や気象庁も言及せざるを得ないほどの社会的影響
今回の予言騒動が、単なる一過性のオカルトブームと決定的に違うのは、公的機関や各分野の専門家が公式にコメントせざるを得ない状況にまで発展したという点です。これは、噂が無視できないレベルで社会に浸透し、具体的な影響を及ぼし始めたことを意味します。
- 気象庁長官による異例の言及:2025年6月13日の定例記者会見で、気象庁の野村竜一長官が「現在の科学的知見では、日時と場所、大きさを特定した地震予知は不可能。そのような予知の情報はデマと考えられるので心配する必要は一切ない」と明言しました。国の防災情報の中枢である気象庁が、名指しこそ避けたものの、特定の「予言」に対して公式見解を示すのは極めて異例のことです。これは、問い合わせが殺到するなど、業務に支障が出始めていた可能性も示唆します。
- 各界専門家による科学的検証の広がり:社会学者の古市憲寿氏や地震予知研究の権威である東海大学客員教授の長尾年恭氏など、各分野の専門家がテレビや新聞、ネットメディアで次々と科学的根拠に基づいた解説を行いました。「東日本大震災の3倍の津波は物理的に起こり得ない」「一回の地震で香港からフィリピンまでが地続きになることは地球物理学的に不可能」といった専門的な見地からの明確な否定が、かえってこの予言の知名度を上げ、騒動の大きさを物語る結果となりました。
このように、権威ある機関や人物が「火消し」に動かざるを得なかったこと自体が、この予言の社会的影響力の証明であり、騒動をさらに大きなニュースへと押し上げる逆説的な効果を生んでしまったのです。
4-2. 理由2:海外での旅行キャンセルと約5600億円の経済損失試算
この予言の影響が最も具体的かつ深刻な形で現れたのが、インバウンド観光への打撃です。噂は国境を越え、特に香港、台湾、韓国などアジア圏で急速に広まり、無視できない経済的影響を引き起こしています。
- 航空会社の相次ぐ減便・運休:香港のLCC「グレーターベイ航空」や大手「香港航空」は、2025年7月前後の日本行き旅行客の需要が急減したことを公式な理由として挙げ、仙台便や徳島便などの減便・運休を決定しました。鳥取県の米子空港でも香港便の搭乗率が前月から15ポイント以上落ち込むなど、特に地方の観光業に直接的な大打撃を与えています。
- 衝撃的な経済損失の試算:野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストである木内登英氏は、この一連の訪日客減少が、日本のインバウンド需要を約5,600億円も押し下げる可能性があるとの衝撃的な試算を発表しました。科学的根拠のない一個人の夢の話が、これほど具体的な実体経済の損失に繋がるという事実は、グローバル化と情報化が進んだ現代社会の脆弱性を浮き彫りにしています。
なぜ海外、特に香港でこれほど予言が信じられたのでしょうか。その背景には、登録者数660万人を誇る中国語圏の超人気YouTuber「老高與小茉」がこの話題を取り上げたことで一気に拡散したことや、香港の人々の間に根強い「風水」を信じる文化と結びつき、「念のため日本への旅行は避けよう」という心理が働きやすかったことなどが指摘されています。
4-3. 理由3:1999年「ノストラダムスの大予言」との比較と人々の心理
今回の騒動を見て、多くの人が1999年に世界中を席巻した「ノストラダムスの大予言」を思い起こしたことでしょう。「1999年7の月、空から恐怖の大王が来るだろう」という予言は、当時、一種の社会現象となり、終末論として大きな社会不安を引き起こしました。
この二つの予言騒動には、興味深い共通点と、時代を反映した相違点が見られます。
- 共通する人々の心理:
- 具体的日付の魔力:「7月」という具体的な月が示されることで、漠然とした予言が一気にリアリティを帯び、人々の心に強く作用します。
- メディアによる増幅:テレビ、雑誌、そして現代ではYouTubeやSNSが、人々の好奇心を煽り、ブームを後押しする構造は共通しています。
- 不安の受け皿:社会情動が不安定な時期、人々は漠然とした未来への不安を、具体的な「恐怖の対象」に置き換えることで、ある種の安心感を得ようとする心理が働きます。
- 時代を映す相違点:
- 情報拡散のスピードと範囲:最大の違いは情報伝達の様式です。当時はテレビや雑誌、口コミが中心でしたが、今回はSNSやYouTubeにより、国境を越えて瞬時に、かつ双方向的に情報が拡散・増幅されました。
- 作者の存在:ノストラダムスは400年以上前の故人ですが、たつき諒氏は存命であり、自らの言葉で情報の軌道修正や真意の説明を行っている点が大きく異なります。これにより、騒動はより複雑な様相を呈しています。
『ノストラダムスの大予言』の著者である五島勉氏は、後に「子供たちにショックを与えてしまったことに関しては、申し訳ないと思う」と後悔の念を語っています。今回の騒動もまた、テクノロジーは進化しても、人々の「信じたい」「怖いものが見たい」という根源的な心理は変わらないことを示す、貴重な社会学的ケーススタディと言えるでしょう。
4-4. 理由4:SNSとYouTubeによる情報の拡散と増幅


現代のあらゆる社会現象を語る上で、SNSとYouTubeの存在は決定的な要因となります。たつき諒氏の予言も、まさにこれらのプラットフォームを触媒として爆発的に拡散されました。そのメカニズムは以下の通りです。
- 情報の「切り抜き」とセンセーショナル化:『私が見た未来』の複雑な背景や作者の意図、注意深い記述は無視され、「2025年7月5日」「津波は東日本大震災の3倍」といった最も衝撃的で分かりやすい部分だけが「切り抜かれ」て拡散しました。
- インフルエンサーによる権威付け:登録者数が数十万、数百万人にのぼる都市伝説系YouTuberやインフルエンサーがこの話題を取り上げることで、多くの視聴者は「影響力のある人が言うのだから、何か根拠があるのだろう」と感じ、信憑性が増したかのように受け止められました。
- アルゴリズムによる「エコーチェンバー現象」:一度この種の動画や投稿に興味を示すと、各プラットフォームのアルゴリズムが「あなたへのおすすめ」として、同種のコンテンツを次々と表示します。これにより、ユーザーは常にその情報に触れ続けることになり、自分の考えが世の中の総意であるかのように錯覚する「エコーチェンバー現象」に陥りやすくなります。
- 国境を越える情報の伝播:特にYouTubeは多言語字幕機能も充実しており、日本のコンテンツが容易に翻訳され、海外の視聴者にも届きます。これが、香港や台湾で急速に噂が広まった一因です。
誰もが情報の発信者になれる時代だからこそ、情報の真偽をファクトチェックすることなく、感情的に「いいね」や「リポスト」を押してしまうリスクが常に付きまといます。この高速かつ広範囲な情報増幅の構造こそが、今回の騒動をここまで大きくした最大のエンジンであったことは疑いようがありません。
4-5. 理由5:出版社の意向と背景にあるとされる陰謀論
最後に、この予言がここまで広まった背景として、無視できないのが出版社の商業的な意図や、それにまつわる様々な憶測や陰謀論の存在です。『私が見た未来 完全版』を出版したのは「飛鳥新社」という出版社ですが、この出版社の持つ特異なキャラクターと、その中核をなす人物や雑誌が、一部で深い疑念を呼んでいます。
- 出版元「飛鳥新社」と論壇誌『月刊Hanada』:飛鳥新社は、明確な保守・右派の論調で知られる月刊誌『月刊Hanada』を刊行しています。この雑誌は、特定の政治思想を強く打ち出すことで知られています。
- カリスマ編集長「花田紀凱」氏の存在:その編集長を務めるのが、元『週刊文春』編集長として名を馳せた花田紀凱氏です。彼は物議を醸すことを恐れない過激な編集方針で知られています。
- 旧統一教会・幸福の科学との関係性の噂:『月刊Hanada』は、安倍晋三銃撃事件以降、旧統一教会を擁護する特集を繰り返し組んでおり、教団関係者が頻繁に寄稿していることは公然の事実です。また、幸福の科学との関係を指摘する声もあります。
こうした背景から、インターネット上では「この予言は、社会不安を煽ることで特定の政治的目的を達成しようとする、何らかの意図をもって広められているのではないか」という陰謀論が根強く囁かれています。もちろん、これは現時点ではあくまで憶測に過ぎません。しかし、出版元の持つ明確な政治的スタンスや、特定の団体との関係性が、この社会現象を単なるオカルトブームではなく、より複雑で根深いものとして解釈させる要因となっている側面は否定できません。次の章では、この出版社の内実について、さらに詳しく掘り下げていきます。
5. 予言の震源地?出版社「飛鳥新社」と編集長「花田紀凱」とは何者か


『私が見た未来 完全版』という一冊の漫画が社会現象を巻き起こす上で、その内容と同じくらい重要なのが、それを世に送り出した「器」、すなわち出版社の存在です。この予言騒動を深く理解するためには、出版元である飛鳥新社と、その出版活動の中核を担う『月刊Hanada』編集長、花田紀凱(はなだかずよし)氏の特異なキャラクターを知る必要があります。なぜなら、出版社のスタンスや編集長の思想が、本の企画意図、プロモーション戦略、そして世論形成にまで少なからず影響を与えるからです。ここでは、彼らがどのような存在なのかを、客観的な事実に基づき多角的に解説します。
5-1. 飛鳥新社はどんな出版社?『月刊Hanada』とは?
飛鳥新社は、1978年に設立された日本の出版社です。その出版物は多岐にわたり、ビジネス書やタレント本、ベストセラーとなった『変な家』シリーズのようなエンターテイメント小説まで、幅広いジャンルの書籍を刊行しています。しかし近年、この出版社のアイデンティティを最も強く象徴しているのが、月刊誌『月刊Hanada』の存在です。
『月刊Hanada』は2016年4月に創刊された、いわゆる「保守論壇誌」に分類される雑誌です。政治・社会問題について、明確な保守・右派の立場から、非常に戦闘的な論陣を張ることで知られています。『正論』(産経新聞社)や『WiLL』(ワック)といった他の保守系雑誌と比較しても、その舌鋒の鋭さや敵対勢力への攻撃的な姿勢は際立っています。
特に、故・安倍晋三元首相に対しては一貫して熱烈な支持を表明し、逆に朝日新聞をはじめとするリベラル系メディアや立憲民主党などの野党に対しては、容赦のない厳しい批判を展開するスタイルが特徴です。そして、この雑誌が社会的に大きな物議を醸したのが、安倍晋三銃撃事件以降の論調です。多くのメディアが事件の背景として旧統一教会の問題点を追及する中、『月刊Hanada』は「統一教会批判は魔女狩りだ!」と題した特集を組むなど、一貫して教団を擁護する姿勢を見せました。この明確なスタンスが、今回の『私が見た未来』の出版元であるという事実と結びつき、一部で様々な憶測を呼ぶ一因となっているのです。
5-2. 編集長・花田紀凱氏の経歴と『週刊文春』『WiLL』での実績
『月刊Hanada』という個性的な雑誌の舵を取るのが、出版業界で「伝説の編集長」とも称される花田紀凱氏(1942年生まれ)です。彼の波乱に満ちた経歴は、戦後日本の雑誌ジャーナリズムの光と影を体現していると言っても過言ではありません。
年代 | 経歴 | 主な出来事・実績 |
---|---|---|
1966年~ | 文藝春秋に入社 | 『週刊文春』『文藝春秋』編集部に在籍し、編集者としてのキャリアをスタート。 |
1988年~ | 『週刊文春』編集長に就任 | 「文春砲」の礎を築き、タカ派の論調と強力なスクープで同誌を週刊誌売上トップへと押し上げる。女子高生コンクリート詰め殺人事件での加害者実名報道など、物議を醸す決断を次々と下す。 |
1994年~ | 『マルコポーロ』編集長に就任 | ホロコーストを否定する記事を掲載した「マルコポーロ事件」を引き起こし、世界的な批判を浴びて雑誌は廃刊。自身も編集長を解任され、文藝春秋を去るきっかけとなる。 |
1996年~ | 文藝春秋退社後、朝日新聞社や角川書店に移籍 | いくつかの雑誌の編集長を務めるが、休刊が相次ぎ、「雑誌クラッシャー」と揶揄される不遇の時代を過ごす。 |
2004年~ | ワック・マガジンズにて『月刊WiLL』編集長に就任 | 保守論壇誌として一定の地位を築き、再び編集者として手腕を発揮する。 |
2016年~ | 飛鳥新社に移籍、『月刊Hanada』を創刊 | 『WiLL』の執筆陣や編集スタッフの多くを引き連れて独立・移籍する形で創刊し、現在に至る。 |
花田氏は、権威やタブーに臆することなくスキャンダルを追及する過激な編集方針と、何が売れるかを見抜く卓越した商業的嗅覚で知られています。その一方で、マルコポーロ事件のようにジャーナリズムの倫理を問われる事態も引き起こしてきました。彼のこの強い個性と、毀誉褒貶の激しい編集者人生そのものが、『月刊Hanada』、ひいては飛鳥新社のカラーを唯一無二のものにしていると言えるでしょう。
5-3. なぜ物議を醸す?花田紀凱氏の編集方針とメディアでの評価
花田紀凱氏の編集方針は、一言でいえば「戦うジャーナリズム」、あるいは「確信犯的炎上商法」とも評せます。彼は、世間の常識やリベラルな風潮に真っ向から挑戦し、社会的な物議を醸すことを恐れません。むしろ、論争を巻き起こすことで部数を伸ばし、雑誌の影響力を高めるという手法を熟知しています。その姿勢は、熱狂的な支持者を生む一方で、常に激しい批判の的となってきました。
- 支持者からの評価:彼の支持者からは、「大手メディアが忖度して報じない“真実”を伝えてくれる」「日本の国益を真剣に考えている稀有なジャーナリストだ」「言論の自由を守るための戦士」といった、非常に高い評価を受けています。彼の雑誌は、既存メディアに不信感を持つ層の受け皿となっています。
- 批判者からの評価:一方で、批判的な立場からは、「歴史の事実を歪める歴史修正主義的である」「特定の政治家や政治勢力に過度に肩入れし、ジャーナリズムの中立性を欠いている」「敵と味方を明確に分け、対立を煽るだけで建設的な議論に繋がらない」「ヘイトスピーチと紙一重の表現が散見される」といった厳しい批判が絶えません。
今回の『私が見た未来』のミリオンセラーという現象も、花田氏のこうした編集者としての資質と無関係ではありません。「予言」というオカルト的なテーマであっても、それが世間の関心を集め「売れる」と判断すれば、躊躇なく出版に踏み切る商業的な嗅覚。そして、その本をきっかけに社会に一石を投じ、議論を巻き起こしたいというジャーナリストとしての信条。この二つが働いた結果と見るのが妥当でしょう。彼のような物議を厭わない編集者が仕掛け人であったからこそ、この予言本が単なる一冊の漫画に留まらず、これほど大きな社会的話題に発展したという側面は、間違いなく存在すると私は分析しています。
6. 花田紀凱氏と統一教会・幸福の科学の関係とは?陰謀論の真相に迫る
『私が見た未来』の出版元である飛鳥新社、そしてその雑誌『月刊Hanada』を率いる花田紀凱氏を巡っては、特定の宗教団体、特に旧統一教会(現:世界平和統一家庭連合)や幸福の科学との関係を指摘する声がインターネット上で根強く存在します。これが「予言は、特定の意図を持った勢力によって意図的に広められたのではないか」という陰謀論の一端を担っています。この章では、憶測や噂話に留まらず、報道や公になっている具体的な事実を基に、その関係性の真相に迫ります。
6-1. 『月刊Hanada』はなぜ旧統一教会を擁護するのか?
2022年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件以降、犯人の動機としてクローズアップされた旧統一教会に対し、日本のメディアは一斉にその問題点を追及するキャンペーンを展開しました。霊感商法や高額献金、政治家との癒着など、多くの批判が巻き起こる中、『月刊Hanada』は際立って異質な論陣を張りました。
その象徴が、2022年10月号で組まれた「総力特集 統一教会批判は魔女狩りだ!」です。この特集では、教団への批判を一方的なバッシングであると断じ、メディアや野党、さらには教団と距離を置き始めた自民党の一部議員までをも厳しく批判しました。その後も、教団の解散命令請求に反対する記事や、被害を訴える2世信者を批判する記事などを繰り返し掲載しています。この、他の保守メディアと比較しても突出して明確な擁護姿勢が、花田氏および飛鳥新社と教団との間に何らかの特別な関係があるのではないか、という疑念を生む最大の理由となっています。
花田氏自身は、ジャーナリスト斎藤貴男氏との対談(現代ビジネス 2022年9月24日掲載)で「僕は『世界日報』(統一教会の機関紙)を忌避していない。スクープを取ってくる腕のいい記者がいる右派新聞だと認識している」と語っています。この発言からは、彼が旧統一教会を「反共」「保守」というイデオロギーを共有する、連携可能なカウンターパートの一つとして認識していることが明確に読み取れます。
6-2. 記事に教団幹部が寄稿?指摘される旧統一教会との具体的な関係性
『月刊Hanada』と旧統一教会の関係は、単なる擁護的な論説を掲載するだけにとどまりません。実際に、教団の幹部や関係者が執筆者として誌面に登場しているという、より直接的な事実が存在します。
- 鴨野守(かもの まもる)氏の寄稿:鴨野氏は旧統一教会の広報局長やUPF-Japan(天宙平和連合)の事務総長などを歴任した、教団のスポークスマンとも言える重要幹部です。彼の署名が入った記事が、『Hanada』には2022年11月号や2024年5月号などに複数回掲載されています。
- 藤橋進(ふじはし すすむ)氏の寄稿:藤橋氏は教団の機関紙「世界日報」の元編集局長であり、彼の記事も2019年6月号に掲載されました。さらに花田氏自身も、ネット番組「言論テレビ」に藤橋氏をゲストとして招き、対談形式でその記事の宣伝を行っています。
- 徳永信一(とくなが しんいち)弁護士の寄稿:徳永弁護士は、教団信者の信教の自由などを巡る一連の裁判で原告代理人を務めている人物です。『Hanada』2023年11月号には、彼の筆による「旧統一教会 解散請求問題の核心」と題する、政府の方針に真っ向から抗議する記事が掲載されました。
これらの事実は、両者の間に思想的な親和性だけでなく、具体的な人的な交流や協力関係が存在することを示唆しています。ただし、これが直接的な金銭の授受や組織的な癒着を意味するのか、それとも「言論の自由」や「反リベラル」という大きな枠組みの中での共闘関係なのか、その実態についてはさらなる検証が必要です。しかし、少なくとも両者が密接な関係にあることは、公然の事実と言ってよいでしょう。
6-3. 幸福の科学との関係は?関連団体イベントへの参加の事実
旧統一教会と同様に、幸福の科学との関係性も一部で指摘されています。こちらも具体的な事実関係を見てみましょう。
2015年5月、幸福の科学の政治団体である「幸福実現党」党首の釈量子氏らが、いわゆる「慰安婦」資料のユネスコ記憶遺産登録に反対する反論書をパリのユネスコ本部に提出した際、その運動の賛同者として花田紀凱氏が名を連ねていました。
また、幸福の科学の関連団体である「幸福の科学出版」が運営するウェブサイト「ザ・リバティWeb」には、過去に花田氏を取材した記事が掲載されています。さらに興味深いのは、同サイトに「大川隆法総裁が花田編集長の守護霊霊言を収録した」という内容の記事が掲載されている点です。これは幸福の科学側からの一方的なアプローチではありますが、教団側が花田氏を重要な言論人として強く意識し、関心を寄せていることの表れと見ることができます。
これらの事実から浮かび上がるのは、花田氏が自身の思想や雑誌の方向性と合致すると判断すれば、相手が新宗教団体であっても協力関係を築くことに抵抗がない、という一貫したスタンスです。彼の行動原理は「反共」「保守」「反リベラル」というイデオロギーであり、その旗の下に集まる勢力とは、相手が誰であれ連携するというプラグマティックな姿勢が見て取れます。旧統一教会との関係ほど密接な証拠は現状見当たらないものの、思想的な親和性から協力関係にあると推測することは十分に可能です。
6-4. 出版の背景にあるとされる憶測とネット上の反応を解説
これまでに見てきたような、出版元である飛鳥新社と花田紀凱編集長の特異なキャラクター、そして特定の宗教団体との関係性を背景に、『私が見た未来』の出版と、その後の爆発的なブームを巡って、ネット上では様々な憶測や陰謀論が渦巻いています。ここでは、代表的なものを整理し、なぜそのような見方が生まれるのかを解説します。
- 憶測1:「教団の資金・組織力が背景にある説」
これは、「ミリオンセラーという異常な売れ行きの背景には、旧統一教会や幸福の科学のような組織力のある団体が、書籍の大量購入や信者間での口コミ拡散に関与しているのではないか」という見方です。これらの団体が過去の選挙活動などで見せた動員力や資金力を知る人々にとって、ごく自然な推測と言えるかもしれません。実際に、一部の宗教団体では、教祖の著作を信者が大量に購入し布教活動に使う「献本」という文化が存在します。しかし、今回のケースで組織的な関与があったという具体的な証拠は、現時点では見つかっていません。
- 憶測2:「政治的意図・陰謀論」
より踏み込んだ見方が、「この予言ブームは、意図的に作り出されたものではないか」という陰謀論です。具体的には、「『大災害への不安』を社会に広めることで、人々の保守的な意識(強いリーダーシップを求める心理や、国防への関心)を喚起し、最終的には『憲法改正』や『軍備増強』といった保守的な政治課題への支持を高めようとする狙いがあるのではないか」というものです。この憶測は、出版元である飛鳥新社や花田氏の持つ明確な政治的カラーから生まれています。災害という人々の根源的な不安を、特定の政治思想の推進力として利用しようとしている、という見方です。
- 憶測3:「単純な商業的ヒット狙い説」
一方で、最もシンプルな見方が、「裏に複雑な意図はなく、純粋に商業的なヒットを狙った結果に過ぎない」というものです。伝説の編集長である花田氏は、「売れる」と判断すれば、そのテーマがオカルトであろうと政治であろうと躊躇しません。1999年のノストラダムスブームを見てもわかるように、「予言」や「終末論」はいつの時代も一定の需要がある鉄板コンテンツです。そこに、「東日本大震災の的中」という極めて強力な宣伝文句(フック)が加わったことで、彼はこれが商業的に大成功すると確信した、という見方です。この説に立てば、他の憶測は結果論に過ぎないということになります。
現在、SNS上ではこれらの憶測が入り乱れ、「予言を純粋に信じる派」「科学的に否定する派」「出版元の意図を疑う陰謀論派」が三つ巴となり、日々激しい議論を繰り広げています。一つの漫画の出版が、これほど多様な解釈と論争を生んでいること自体が、この問題の根深さを物語っているのです。
7. まとめ:たつき諒の2025年7月予言に私たちはどう向き合うべきか
ここまで、漫画家たつき諒氏の「2025年7月予言」について、その衝撃的な内容から社会現象化に至った複雑な背景、そして出版元を巡る様々な憶測まで、あらゆる角度から深く掘り下げてきました。情報が錯綜し、不安や好奇心が渦巻く中で、私たち一人ひとりは、この一連の騒動とどう向き合っていくべきなのでしょうか。本記事の締めくくりとして、これまでの要点を整理し、単なる情報の受け手で終わらないための具体的な指針を提言します。
7-1. 予言の要点と現状のまとめ
まず、現在地を正確に把握するために、これまでの膨大な情報を重要なポイントに絞って簡潔に整理します。このまとめを見るだけでも、騒動の全体像が掴めるはずです。
- 予言の核心部分:たつき諒氏の著書『私が見た未来 完全版』には、1985年から記録された「夢日記」に基づき、2025年7月に日本とフィリピンの中間地点の海底が噴火し、東日本大震災の3倍規模の巨大津波が太平洋沿岸を襲うという、極めて具体的な夢の記録が記されています。
- 日付に関する公式な軌道修正:当初、夢を見た日付から「7月5日」という具体的な日付が独り歩きしましたが、作者本人が2025年6月発売の新刊『天使の遺言』で「夢を見た日であり、災害が起きる日ではない」と明確に否定・軌道修正しました。
- 信憑性の科学的評価:過去に東日本大震災の発生年月などを「的中させた」とされる一方で、今回の予言内容については、気象庁や地球物理学の専門家から「科学的根拠はない」「物理的に起こり得ない」と完全に否定されています。「的中率90%」といった言説も、何の根拠もないデマ情報です。
- 無視できない社会・経済への影響:この予言は国内外で大きな話題となり、特に香港では日本への旅行キャンセルが相次ぎ、約5600億円規模の経済損失が出るとの試算も発表されました。気象庁長官が異例の言及をするなど、現実社会に大きな影響を及ぼす社会問題となっています。
- 複雑な背景:このブームの裏には、出版元である飛鳥新社と、その編集長・花田紀凱氏の持つ強い政治的カラーや、旧統一教会などの特定の宗教団体との関係性が指摘されており、これが「意図的に広められたのでは」という陰謀論を生む土壌となっています。
結論として、この予言騒動は、もはや単なる一個人のオカルト的な話題ではありません。情報、経済、政治、宗教、そして人々の深層心理が複雑に絡み合った、まさに現代社会そのものを映し出す複合的な社会現象であると理解することが、冷静な判断の第一歩となります。
7-2. 不安を煽る情報に惑わされず、防災意識を高めるきっかけに
では、私たちはこの洪水のような情報の中から、何を汲み取り、どう行動すればよいのでしょうか。私がジャーナリストとして最も伝えたい結論は、「予言を恐れるのではなく、備えるきっかけにする」という、極めて実践的な向き合い方です。
興味深いことに、作者であるたつき諒氏本人も、メディアの取材に対して「(予言への)高い関心は防災意識が高まっている証拠であり、前向きに捉えております」「この関心が安全対策や備えにつながることを願っております」とコメントしています。つまり、予言が当たるか外れるかという不毛な議論に一喜一憂するのではなく、この社会的な関心の高まりを、自分や大切な家族の命を守るための具体的な行動へと転換することこそが、最も賢明で、かつ作者の意図にも沿った向き合い方なのです。
日本は、明日どこで大地震や津波、火山噴火が起きても全く不思議ではない、世界有数の災害大国です。私自身もこの記事を執筆しながら、自宅の防災グッズを見直し、家族と避難場所について再確認しました。この機会に、ぜひ以下の点をご自身の生活に当てはめて見直してみてください。
- ハザードマップの「自分ごと化」:お住まいの自治体のウェブサイトでハザードマップを確認するのは基本ですが、そこで止まらず、「津波が来たらこの道を通って、あの高台の小学校に逃げる」「川が氾濫したら、2階以上に垂直避難する」といった具体的な避難行動計画までシミュレーションしておくことが重要です。「うちは大丈夫」という正常性バイアスを捨てることが第一歩です。
- 防災グッズのアップデートと「ローリングストック」:非常食や飲料水(1人1日3リットルが目安)、簡易トイレ、モバイルバッテリーなどの備蓄は十分でしょうか。特に見落としがちなのが使用期限です。また、普段から少し多めに食料品などを買い置きし、使った分だけ買い足す「ローリングストック法」を実践すれば、無理なく災害に備えられます。最近では、ポータブル電源の価格も手頃になり、停電時の情報収集やスマートフォンの充電に絶大な威力を発揮します。
- 災害時の「連絡手段」の複数確保:災害時には電話回線がパンクします。家族との安否確認の方法として、災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板(web171)、そしてLINEやFacebookなどのSNSをどう活用するか、事前にルールを決めておきましょう。「まずはこのグループLINEに安否を報告する」「連絡が取れない場合は、〇〇小学校の体育館に集合する」といった具体的な取り決めが、パニックを防ぎます。
- 情報リテラシーという「心の防災」:SNSなどで流れてくるショッキングな情報に安易に飛びつかず、「この情報の発信源はどこか?」「公的機関の発表か?」「科学的根拠はあるのか?」と、一旦立ち止まって考える癖をつけましょう。感情を煽るような言葉が使われている情報ほど、注意が必要です。
コメント