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【セミナーレポート 6月22日(火)実施 第4回】戦略的360度フィードバック実現の条件 ~米国主要企業における、戦略的360度フィードバックの活用事例

【CBASE U 公開講座】
半蔵門オフィス×株式会社シーベース共催
人事担当者が押さえるべき
戦略的360度フィードバック実現の条件
~米国主要企業における、戦略的360度フィードバックの活用事例

半蔵門オフィス代表 南雲道朋氏と、株式会社シーベース 代表取締役 深井幹雄氏による公開講座「人事担当者が押さえるべき戦略的360度フィードバック実現の条件」第4回では、「米国主要企業における、戦略的360度フィードバックの活用事例」についてディスカッションが行われました。今回の5回シリーズの講座では、米国の最新のハンドブック『Handbook of strategic 360 Feedback』(2019年版)をベースに、その内容の紹介および議論が行われています。

トピック1 経営幹部育成・サクセッションプランニング

ケース1-1 経営幹部育成研修の雛形の確立

南雲氏は始めに、経営幹部育成・サクセッションプランニングの手法について解説しました。紹介したのはロンドンビジネススクールの講師と企業が共同で作成した、360度フィードバックと経営幹部育成プログラムを一体化した研修です。これは360度フィードバックの内容とコース内容が1対1で対応したものであり、360度とケーススタディ研修とコーチの三つ巴による合理性を追求した研修となっています。

具体的には5日間のコース(1日目は全体像)で、各論の四つのテーマ(各1日)が360度フィードバック項目の四つのカテゴリに相当します。例えば、「リーダーシップ・コミュニケーション」コースであれば、「ストーリーの考案」「ビジョンの伝達」「優先順位の明確化」「効果的な説得」のテーマで、フィードバックを1日目の最後に行い、残り4日間はケーススタディ等を提供。プログラムでは外部コーチを雇い、360度の結果の解釈が行われます。ここでのコーチングスタイルは質問中心ではなくアドバイス中心です。

ケース1-2 CxO後継者育成プログラムの短期間での構築

ここから南雲氏は360度を活用した人材育成の企業事例を紹介しました。1社目はコンシューマプロダクト分野で社員4万人の上場グローバル企業の例です。5年間の戦略計画の承認にあたり、経営トップチームの後継者計画の不備が指摘され、早急に計画を確立させる必要に迫られていました。

ステップ1:CXOの役割を評価
役員会の前日に1人あたり1時間ずつとってインタビューを行い、各CXO別のサクセス・プロファイルを作成しました。次にCXOのシニア・ヴァイス・プレジデント層が共通して超えなければならない「リーダーシップ・キャズム(谷間)」を明文化。ここでは「広い視野」&「徹底的なフォーカス」のように、相反する二つの軸の統合ができるかが鍵であり、それを360度の項目に反映させました。

ステップ2:CXOの後継候補者を評価
次に28名の候補を10週間で評価しました。そのためにまず360度フィードバック(18カテゴリ、全45項目)を実施。候補者のいる拠点に出向いて、インタビューおよびロールプレイアセスメントを4時間のプログラムで行いました。

ステップ3:開発(育成)を加速
コーチが2時間をかけてフィードバックを実施。CEOは隔月で各CXOに育成計画の進捗報告を求め、以降、経営会議/取締役会では半年に1度は必ず後継者に関するディスカッションを行います。南雲氏は「短期間で育成プログラムを構築するには、フィードバック者への信頼を確保し、外部コーチの効果的な利用を行い、トップと上司がコミットすることが重要」と述べました。

ケース1-3 執行役員クラスに360と評判の組合せフィードバック

次の事例はWalmartです。執行役員クラスにおいて従来の360度評価に加え、「評判」のサーベイとフィードバックを導入しています。対象の役員の上司が選んだステークホルダーに対し、秘密保持の観点から外部コーチがインタビューを行いました。本人にはパーソナリティテストと認知力テストを同時に受けてもらい、フィードバックの材料にします。結果はまず上司にフィードバックし、上司の判断で本人へのフィードバック内容を決定。そして上司およびコーチと安全な空間で洞察を深め、アクションプランを作成します。

南雲氏は「これによって、人材のあるべき姿の明文化ができるので、条件を見える化し共有していくことが重要ではないか。ただし評判サーベイの情報をどのように扱い、誰に提供してよいかについては慎重に検討すべき」と語りました。

深井氏は「経営幹部やその後継者育成のニーズは増えてきているように感じる。ある企業では、時代が変わって以前と望む幹部像が変わりつつあり、新しい戦略を考えるうえで新たなWhatをつくらないといけない。そうした人材を選別する情報を360度から得ているというお客様が見られている」と述べました。

トピック2 環境変化に適応する組織変革

ケース2-1 伝統金融機関のリーマンショック後の企業文化変革

次は環境変化に適応する組織変革において、社員1万1000人規模の老舗金融機関の例が紹介されました。リーマンショック後にビジネスモデル転換に向けて、新たなCEOを指名し、新たな企業ミッションと戦略を展開。重視されるリーダーシップコンピテンシーの浸透のために360度を活用しました。実施したのはミドルマネジャーの360度フィードバックで、目的はあくまでも育成です。同時にエグゼクティブリーダーシッププログラムも実施。CXOの2ランク下の200名ほどの後継者リストから対象者を選定し、コーチをアサイン。結果、目指す組織像からコンピテンシーへの展開に成功しています。

ケース2-2 伝統家電メーカーのリーマンショック後の組織変革

次は家電メーカーWhirlpoor社の例です。リーマンショック後に不況が直撃。チームパフォーマンスを高めて、製品開発力を高めるために、ハイパフォーマンスチーム開発プログラムを開発しました。そのチーム開発手法においては、5軸のモデルに基づいて「チーム(職場)全体」「チームリーダー」「チームメンバー」の評価を同時に実施。チームメンバーの360度ではメンバーを並べて一表で評価を行っています。これらを全社トレーニング&チーム開発プログラムに組み込み、全社展開にあたってはHRBPがファシリテーターのプロセス・スキルを習得して推進役となっています。この手法は職場、リーダー、個人を一体的に開発する点において合理的であり、同社はチーム開発プログラムとして社内標準化しています。

ケース2-3 製薬業の営業組織のスキル棚卸とスキル転換

次は世界有数の製薬会社の例です。400名のセールスリーダーを対象に、マーケットの変化に対応し、営業戦略を変えるとともにセールスパフォーマンスを高める施策が行われました。個々の行動データを収集し、その検証によりコンピテンシーモデルを強化。営業成績を左右する主要な行動要因を特定し、その主要な行動をサポートするための人材開発戦略にシフトしました。その後、アセスメント結果を利用した、インパクトのあるフィードバックや開発計画を促進しています。また、マインドの変革では、全体結果および組織別結果をもとに、経営チームのディスカッションから始め、チームレベルでのディスカッションに落としていきました。営業成績との関係分析においては3年間の表彰履歴に着目して分析。結果の傾向分析から、それを人材開発戦略、プログラムの変革に活かしています。

深井氏は「これらの事例は徹底して行っている印象がある。米国はあうんの呼吸が通じない文化だからこそ、こうした活動により、徹底して見える化して認識のすり合わせを行っている。ここまで徹底して見える化、明文化を行わないと、認識がなかなか揃わないのだと感じた」と述べました。

トピック3 特定職種(プロフェッション)の人材像の刷新

ケース3 360度フィードバックを職種形成のために用いる(HRの場合)

次に南雲氏は、デイビッド・ウルリッチが行った、過去30年間、HRが事業の成功に向けてどれだけコンピテンシーを発揮できているか、という調査を紹介しました。HRのコンピテンシーのビジネスインパクトはこの30年で増してきており、コンピテンシーの内容も進化しています。また、調査データの分析を通じ、HRコンピテンシーの体系も進化しています。

ウルリッチ氏は360度を職種形成に用いる際のアドバイスを三点述べています。一つ目は『コンピテンシーだけでなく、成果にフォーカスする』こと。360度を通じてコンピテンシーを測定するだけでなく、個人やビジネスの成果と結び付けて分析することが重要です。二つ目は『コンピテンシーモデルを進化させ更新する』こと。リーダーシップコンピテンシーモデルは4~5年ごとに30%~40%の内容が変化します。三つ目は 『個人の属性や特性、組織的な条件を考慮に入れる』こと。リーダーの360度コンピテンシーが個人の属性や特性とも関係することを確認し、個人ごとに適切な期待値を定めます。

今後、企業は職種固有のコンピテンシーを定義し、コンピテンシーの発揮度合いとビジネスインパクトを継続的に測定していく必要があります。そして、コンピテンシー自体を進化させながら、プロフェッションの定義を刷新していきます。南雲氏は最後に「人事はHRプロフェッションに限らず、CXOの機能軸での人材育成や文化形成について考えていくべき。積極的に明文化し、かつ360度を測定して、そのデータを業績と結び付けられれば、さらに次に進む議論ができます。そして、人事は皆が今どう思っているかを常に把握すべきでしょう」と述べました。

深井氏は、企業内における人事のポジションについて次のように述べました。

「これらの事例をみていると、人事の重要性がどんどん高まっていると感じます。以前であれば経営企画の方が抱えていたテーマだったものが、『その解決は組織や文化を変えないと実現できない』ということで人事が担うケースが増えている。組織におけるコンピテンシーの変化を、360度を活用してみていくことの大切さを感じています。ここで何を見える化するか、というとやはり人の問題ですから主観データが重要になります。この部分をいかに見える化するかが人事のこれからの課題ではないでしょうか」

半蔵門オフィス 代表
南雲 道朋
東京大学法学部卒、日系大手電気通信メーカーのソフトウェア開発企画部門に勤務後、外資系コンサルティング会社にて現場再生のコンサルティングに従事。
1998年以降、マーサージャパン、HRアドバンテージ、トランストラクチャなどにおいて人事・組織に関するコンサルティングや関連するウェブソリューション開発をリード。その経験の総まとめのために、2018年に半蔵門オフィスを設立。
最新の著書に、『データ主導の人材開発・組織開発マニュアル』(経営書院)(2021/3)がある。情報処理学会会員。

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株式会社シーベースでは、HRテクノロジーを中心とした人材開発論・組織開発論を学びたい社会人向けの講座「CBASE U」や、360度評価をはじめとするサービス紹介のセミナーなど、様々な講座・企画を実施しております。


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